[映画]『アメリカン・ギャングスター』 リドリー・スコット監督

評点:35点(100点満点中)

ベトナム戦争の頃。ヘロイン、コカイン、覚醒剤などの流通でNYを牛耳ったギャングの実話を元に製作された映画。

NYマフィアの「ドン」の運転手であった、デンゼル・ワシントン扮する主人公は、今までどのマフィアもやらなかった方法で麻薬を集め、巨万の富を得る。
そして、腐敗だらけの警察内部で自己の信念を貫き、逮捕しようとするラッセル・クロウ扮する刑事。物語はこの二人の視点を通じて語られる。

全編を覆う重苦しい雰囲気は、当時のアメリカの闇をうまく表現している。
笑うポイントなど一つもなく、ただただ苦い気持ちにさせられる。

警察、司法、弁護士、監察官、そして軍隊までグルになって不正を行っているのだから、当時のアメリカがいかにおかしかったかということだろう。
そして、それが今ではなくなっているのか、という疑念を持つと空恐ろしい気分になる。

ただ映画はといえば、よくいえば淡々と事実を描写、悪く言えば映画としてはあまりに山も谷もない出来映えになっている。
どちらかというとマフィア側の視点から撮られている内容は、ともすればその行動を肯定する内容にも取られかねない。

悪いのは社会であって、こういった輩は必然的にでたいわば必要悪だと。そういった中にも、信念を持って活動している人間がいるのだと。

もちろん監督にそのような意図はなかっただろうが、人によってはそのように感じてしまうのではないか、というくらい主観が曖昧だった。

また、当然刑事がマフィアを追い詰める姿を期待するのだが、その描写が非常に薄い。よって、このビッグネーム二人が本作内で絡むこともほとんどないのだ。
個人的に、それは非常に残念であった。

ドキュメンタリーにもドラマにもならず、結局どっちつかずの作品になってしまっているように思う。

そういった意味では、同じ警察腐敗物で、また同じくラッセル・クロウが(まだ無名のときに)出演し、サスペンスとエンターテイメントに特化した『L.A.コンフィデンシャル』の足元にも及ばない作品となっている。

当時のアメリカのマフィアについて、そして実在したフランク・ルーカスに興味があれば観る価値があると思うが、それ以外の方には特にオススメできない。

109シネマズの「シネマポイントカード」は、実はかなりお得

今回は、109シネマズによく映画を観にいくという人にとって、ちょっとお得なTipsを。

109シネマズには「シネマポイントカード」というEdy付きカードがあるのだが、これが結構使えるという話。具体的には、以下のような特典がある。

    1.入会時に2,000ポイント付与
    2.「良・席・予・約」というシステムを使い、ネットで事前に指定座席を取れる
    3.「良・席・予・約」利用で、一枚につき1,000ポイント。6.000ポイントたまればタダ券一枚に
    4.ポイントの有効期限なし
    5.毎週火曜日は1,300円
    6.2009年4月まで、毎月19日は1,000円
    7.ペアシート(2名 4,000円)、エグゼクティブシート(1名 2,500円)が通常料金
    8.通常の買い物でも1,000円につき30ポイント(※)
    9.劇場では専用端末を使えるので、売り場に並ばなくてよい
    10.その他、試写会などの各種イベント招待

    ※ただし、クレジット機能付きのブロンズカードのみ

この中で、特に「3」の6,000ポイントでタダ券一枚というのは、映画を定期的に観にいく人にとってはかなりお得だと思う。

1,800円 × 6 = 10,800円
1,800円 ÷ 10,800円 = 約16%

ということで、単純計算で17%の還元率のあるカードということになる。

チケットの値段は関係ないので、映画の日やレディースデーでも1,000ポイント付与される。
それで貯めたポイントで一般チケットを買うとすると、

1,000円 × 6 = 6,000円
1,800円 ÷ 6,000円 = 30%

というかなり破格な還元率だ。

ちなみに、以前私が入ったのはクレジット機能も付いた「ブロンズカード」というもので、入会時には6,000ポイントが付いていたり、無料でFeliCaポートであるパソリが付いていたりと、結構な大盤振る舞いだった。

それが祟ったのかどうかは分からないが、残念なことに現在ブロンズカードは新規入会停止中だそうだ。

とりあえず、あまり頻繁に109シネマズに行くわけでもない私でも、これらの機能は非常に便利で、映画に行く際のちょっとした「気構え」が大分取れた気がする。

同時にこれがシネコンの強みであり、こうして囲い込みをしていくことで生き残りを図っているのだろうな、と思った。

参考:
http://109cinemas.net/pointcard-2.html
http://109cinemas.net/pointcard-privilege.html

[読書]一勝九敗 柳井正

ご存知「UNIQLO」の運営会社であるファースト・リテイリングの社長、柳内氏の自伝的著書。
全編本人が書かれたようで、淡々とした語り口の中にも興味深い事実が多くある。

主に「経営哲学」について書かれており、経営者およびそれを志す人にとっては、業種などに関係なくひとつの考え方として非常に参考になるのではないだろうか。

描写は彼の幼少期から、先代の「メンズショップ小郡商事」を若くして引き継いでいくところからはじまる。
その先代も土建などで地元ではかなりの名士だったらしく、遺産も27億円ほどあったという。

このまま素直に父親の店と事業を承継していけば、柳井氏自身の生活もそれなりの(例えば一般的なサラリーマンよりはよっぽどよい)生活が待っていたのだろうが、あえて勝負に出たのがすごいところなのだろう。実際、柳井氏は2006年の世界長者番付で78位(推定資産4200億円)にランクインされている。

巻末にもまとめて書かれている、柳井氏自身が考案したというファースト社の「経営理念」が随所にちりばめられているが、これは特にベンチャー企業にとっては非常に大事な要素ではないだろうか。
確かに使い古された当たり前のことだらけともいえるが、それを本当に実行することの難しさが、社会人であればよく分かると思う。

特に興味深かったのは「本当に優秀な人は10人中2人程度。あとの人は必然的にそれに従う立場になる。たとえ優秀な人を10人集めたところで、結局そうなってしまう」という点。
これは実際会社勤めをしている人には耳が痛いというか、芯を突いているなぁと感じるのではないだろうか。

でもそれでよしとする、そこから組織をどうまとめていくのかを、柳井氏なりの視点と考え方からうまくまとめられている。

確かに、同じような内容の記述が複数回でてきたり、書物として完成度がすごく高いというわけではないが、正に「生きた参考書」としての価値があると思う。

本のタイトルにもなっている「一勝九敗」だが、経営も仕事も負けて当然、大きく負けさえしなければいい、という持論から来ている。
実際、これが書かれた2003年には柳井氏はファースト社の社長職を退いていたのだが、業績の悪化から2005年に再度就任する。

そして近年では、世界のCMコンテストでNo.1になった「UNIQLOCK」や、大ヒット商品となった「ヒート・テック」などを世に送り出しているのだから、この辺りの手腕はやはりさすがといったところ。

ちょっと古い本ながら、経営者のみならず社会人であれば一読して損はないと思う。



[映画]『マンマ・ミーア!』 フィリダ・ロイド監督

評点:60点(100点満点中)

世界中で大ヒットを記録したという舞台の映画化。
ギリシャの小島を舞台にしたということだが、その景色の美しさには目を見張るものがあった。
一度でいいからこんなところで暮らしてみたい、と思ってしまう。

しかし現実はそう簡単なものではないと、主演のメリル・ストリープはうまく表現していたと思う。

あらすじは、メリル・ストリープ扮するドナの娘が、自分の結婚式にまだ見ぬ父親に会いたい一心で、その候補である男性三人に同時に招待状を送ってしまうことから始まる騒動。

カテゴリとしてはミュージカル映画になるのだろうが、見終わった感想はラブコメディという感じだった。
確かにABBAの音楽に乗せた歌とダンスは軽快で見ていて楽しいが、例えば「RENT」のような一流のミュージカル・アクターが集まっているわけではないので、それを期待して観にいくのはオススメできない。

小島のホテルを一人で切り盛りし、娘を一人前まで育て上げた女性のたくましさを、メリル・ストリープは髄所にたくみに織り交ぜている。
美しい風景の中にも、人生の苦悩と苦労、過ぎ去った過去の記憶とこれから、そんなものを言葉に出さずに表現しているのはさすがだと思った。

娘を送り出す後ろ姿を見送るシーンなどは、わずか数秒でさまざまなことを想起させるし、やはりこの人はシリアス・ドラマでこそ映えるのかな、という気もしてしまった。

ただ、前述のように全編を通じて歌とダンスは、娘役のアマンダ・セイフライド(彼女は非常にうまい。吹き替えかどうかは分からないが)以外は正直イマイチ。特にピアース・ブロスナンは彼の良さを完全に消されてしまっていて、かわいそうにも思えた。
また物語の終盤以降の流れは、スピーディすぎてちょっとついていけなかった。「なんでこうなるの?」と、つい頭で考えてしまうが、それはこの映画ではタブーなのかもしれない。

とにかく、ストーリ性などを考えず「ちょっと落ち込んでるから元気になりたいな」とか、大学生のカップルがはじめて観にいく映画とかには最高にぴったりだ(皮肉的な意味はまったくない)。
特に女性で、この手の映画が嫌いという人はまずいないんじゃないだろうか。

そんな感想です。

竹中平蔵がTBSでとんでもないデタラメを言っていた

遅ればせながら、竹中平蔵氏が出演した「久米宏のテレビってヤツは」を見た。
そしてその中で、彼はとんでもないデタラメを言っていた。

番組は出演者が竹中氏に質問する形式になっていた(「追求」にはまったくなっていなかったが)。
すべてがただの言い訳にしか聞こえなかったのだが、特に気になったのは以下の点。

Q.派遣労働者の待遇の問題について
A.「派遣」労働者は全体の2.6%でしかない。非正規雇用者は全体の1/3くらいだが、非正規と派遣を一緒にしてはいけない。

これは、典型的な論点のすり替えではないか。
派遣労働者問題でもっとも重要なのは、その数ではなく彼らが非常に弱い立場に追いやられていることだ。
同じ仕事をしても賃金は低い。保障もない。事情によりそれを望んで選んだ人は別として、今は「それしか選択肢がなかった」人がどんどん増えてきているという問題の返答になっていない。

そもそも、2.6%だからいいということでもないだろう。
もしその人たちの半分でも失業すれば、国の失業率が一気に1%以上も上がることになるというのに。

そして、驚いたのは次の点。

Q.2,000億円相当を、109億円でオリックスに一括譲渡した「かんぽの宿(日本郵政株式会社が運営している=税金で建設された)」問題について。オリックスの宮内義彦氏は、経済財政諮問会議の中心メンバーだったではないか。出来レースではないのか。
A.宮内義彦氏はメンバーではなかった。それはマスコミのでっちあげである。

Q.しかし、規制改革会議のメンバーであった。
A.規制会議と郵政民営化とは何の関係もない。

これはあまりにもひどい。
確かに宮内氏は経済財政諮問会議ではなく、規制会議の議長を務めていた。しかし、この二つは密接にかかわりあっていた。

以下に「平成15年度 第5回総合規制改革会議 議事概要」の議事録の一部を引用する。

<宮内議長から資料1について説明>

○その他
7月の第3回会議で、複数の委員から提案があり、その後当会議としての取組み方を検討していた「郵政三事業の民営化など」に関する取り扱いについては、金子大臣が小泉総理とご相談されていたところであるので、その内容について大臣からご説明を頂戴したい。

(金子大臣)本年夏以降、総合規制改革会議の委員の間では、郵政三事業の民営化などについて同会議で取り扱うべきとの議論があったと聞いている。一方、ご存知のとおり小泉総理からは、本件を経済財政諮問会議において集中的に取扱うこととし、そのとりまとめを竹中大臣にお願いしたいとの指示が公式にあった。

~中略~

<質疑応答等> (●質問・意見、→質問・意見に対する回答)
基本ルール・基盤整備WGの関連事項は資料には出てこないが、WGでの取組は引き続き進めていきたい。また、郵政三事業については、経済財政諮問会議で一元的に検討を行う事情は分かるが、当会議に民間からの要望が出されている事項である。要望を反映し、規制改革を聖域なく進める観点からは、その検討の過程において当会議が規制改革の観点からの自ら意見を有することは構わないし、その意見は経済財政諮問会議に宮内議長あるいは金子大臣を通じ伝えていくことが適切ではないか。

→基本ルール・基盤整備WGについては、ご指摘のとおりである。郵政事業については、当会議の答申としてまとめることについては、大臣のご説明にもある事情を踏まえて考えなければならないが、経済財政諮問会議に当会議の考え方を伝えることについては、ご指摘のとおりとしてはどうか。
この点も含め、アクションプランをはじめ今後の当会議としての重要事項の扱いについては、説明があった内容、あるいは質疑の中でご確認いただいたとおり、おおむねこの資料に添った形で決定するということでよろしいか。

(-異論なし-)

(宮内議長)ありがとうございました。年末の答申に向け、今後、特に主査の方には短期間のとりまとめでご苦労を頂くことになるが、どうぞよろしくお願いしたい。

小難しい言葉で書かれているが、
宮内氏:「郵政民営化どうなってんの? 経済財政諮問会議の奴らに言っとけよ」
大臣:「分かりました。伝えます」

とはっきり書いてある。
そもそも、郵政民営化はこの「規制改革会議」で審議されていたことで、後に「経済財政…」にバトンタッチされたはずだ。なぜかその間の議事録は作成されていないのだが。

そういった事実を踏まえて「メンバーではない」「規制会議と郵政民営化は関係ない」などとなぜ言えるのだろうか。

オリックスが一般入札で「かんぽの宿」を手に入れたのならそれは問題ではない。
実際には、内容が開示されないというきわめて不透明なものだったのだが。

そして、一括で譲渡したからこそ低価格で獲得できた、というのもウソではないだろう。
しかし、上記の竹中氏の発言はどうだろう。かぎりなく「クロ」に近いけどクロではない。#000000ではないけど#000001みたいなもんじゃないか。

彼が行ったことや、これから行おうとしていることが本当に間違っていたのかは、正直分からないと思う。
正しいのかもしれないし、違う方法があるのかもしれない。専門に研究している学者や、世界中の国の間にだって見解の違いがあるのだから、仕方のないことだ。

そして、仮にも竹中氏は国民が支持した小泉政権の中核だったわけで、その政策を今更責め立てるつもりは私はない。

しかし、自己を正当化するためにデタラメを言って国民をだまくらかすというのは、いくら政治家を引退したとはいえ、彼の立場上許されないことのはずだ。

そしてこの内容をただ垂れ流したTBSの罪も重い。TVというメディアの影響力は圧倒的だ。あの番組を見た人は「あぁ、そうだったのか。小泉・竹中バッシングは不当なものだったのだな」と思うことだろう。
でも違う。あれは明らかに詭弁だった。

番組の後半に、構造改革のためには現在の正社員の既得権を廃し、雇用の流動化を図ることが必要だ、と述べていた。
そう思うなら、それを説明すればよかったではないか。なぜいい加減なことを言って言い逃れをしようとするのか。

彼のことは好きでも嫌いでもないし、少なくともあの頃「何もしない」という選択肢はなかったわけで、例えば全然違うことをしても失敗していたかもしれないわけだ。
そういう意味では、少なくとも「行動した」ことは評価に値する、と思っていた。

しかしあのような発言をするようでは、とても信用ならぬ人物なのだろう。